いわゆる「小学生にも分かるが大学院生でも解けない」良問パズルの問題のほうを求めるやり方

 

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watto氏が紹介していたパズルで使われている数字の組み合わせの導出方法のわりと簡単な解法が分かったので書いておきたい。なるべくわかりやすく書いたので厳密でない部分があるかもしれないが大目に見て欲しい。多分高校生レベルであればわかると思う。

 

パズルの答え自体をまず言ってしまうと、3桁の数字とそれぞれ右側に数値が並んでいるが、その3桁の数字の上2桁と下1桁をかけた数字が右側の数字となっているという話である。

しかしながら、それと同時に右側の数字は下2桁の数字と上1桁をかけた数字でもあったというのが趣深いという話であった。(なお自分は1分ぐらい考えて全く分からなかったよ!!)

さて新たな問題はそのような条件を満たす3桁の数字を総当たりでなく、理詰めで求められるかというのがwatto氏の疑問である。

条件の整理

3桁の数字を一般化すると下記のようにあらわすことができる。各桁の数字をx,y,zとおくと

100x+10y+z

ただし、9≧x≧1, 9≧y≧0, 9≧z≧0 *1

そしてこの時、3桁の数字の上2桁と下1桁をかけた数字

(10x+y)z

 であり、下2桁の数字と上1桁をかけた数は

(10y+z)x

となる。その二つが等しいので

(10x+y)z=(10y+z)x

ばらすと、

10zx+yz=10xy+zx

9zx+yz=10xy  ・・・★

自明な解を探す

※自明はここではすぐわかるぐらいの意。*2

watto氏も挙げていたが自明な解としてx=y=zの場合がある。つまりゾロ目の111~999である。これは単にy=x, z=xを★の式に代入すれば成り立つことが分かる。

また、x=yを★に代入した時、x=zとなるから結果、x=y=zとなる。

同様にx=zの場合もx=y=zとなる。

よってx=yやx=zの場合はゾロ目に帰着する。

 

また、y=0を★に代入すると9zx=0。x≠0であるから9xで両辺を割ることができてz=0となる。同様にz=0ならy=0となる。よってy=0、z=0のとき★はいつでも成り立つから100~900も自明な解である。

 

ここ以降は上記の簡単な解は考えなくてよいので

x=y、x=z、y=0、z=0

の場合は除くことができる。よって後は

9≧x≧1, 9≧y≧1, 9≧z≧1、x≠y、x≠z

を満たす場合だけ考えればよい。

 

約数を考える

さて★の式だが、9,10でうまく括ってやりたいので両辺に9yzを足してやる。

9zx+10yz=10xy+9yz

10yz-10xy=9yz-9zx

10y(z-x)=9z(y-x)

 

さてここでx,y,zは整数だからそれらを足し算、引き算、掛け算したものも整数である*3

よって上の式のy(z-x)やz(y-x)は整数である。

左辺の10に注目すると左辺は10×整数であるから、10の倍数である。

ここで右辺は9×整数であるが、9は10で割り切れない*4ので残りの整数部分が10で割り切れなければならない。

だから残りの整数部分=z(y-x)は10の倍数である。

ところでzは1~9だから10の倍数にはならない、y-xもせいぜい9-1が最大の差なので同様である。だから10の約数である2と5のどちらかをz,(y-x)がそれぞれ約数として一つずつ持つということが分かる。・・・★★

同様の議論を右辺で考えるとy(z-x)は9で割り切れなくてはならない。ここでz-xは最大でも9-1であって9より小さいのでz-x=9はありえない。よってz-xが9で割り切れることはないため約数の振りわけとしては、9=3x3なので、

1.y=9

2.y=3を約数に持ち、z-xも3の約数である

 

のいずれかであるが、いずれにせよyは3の倍数であることが分かる。ここで★★の条件を振り返るとzかy-xが5の倍数であることが分かるので場合分けして考えてみる。

zが5の倍数

9≧z≧1なのでz=5である。

ここでyは3の倍数なので(y,z)=(3,5),(6,5),(9,5)のパターンを考えればよい。

それぞれ★に代入するとx=-1,2,1となる。9≧x≧1なのでx=-1を除くと

(x,y,z)=(2,6,5), (1,9,5)

が残る。

y-xが5の倍数

y-xは最大で9-1なので10以上にはならない。よって5と-5の場合だけ考えればいい。またy≠xなので0にもならない。

そのようなパターンを単に列挙すると

(x,y)=(1,6),(2,7),(3,8),(4,9),(5,0),(6,2),(7,2),(8,3),(9,4),(0,5)

しかしx≠0,y≠0であり、yは3の倍数なので該当するものだけを残すと

(x,y)=(1,6),(4,9),(8,3)

となる。

それぞれ★に代入するとz=4,8,16/5となる。16/5は整数ではないので除くと

(x,y,z)=(1,6,4),(4,9,8)

が残る。

まとめ

以上から★を条件を満たすx,y,zは

  1. 自明な解:ゾロ目111~999と下2桁が00の100~900
  2. (1,6,4),(1,9,5),(2,6,5),(4,9,8)

であることがわかった。ざっくり証明終わり!

 

感想

議論が甘いところがあるとは思うが大筋は問題ないと思う。正解だけを一発で出すエレガント*5な解法があればいいのだが自分の実力ではここらへんが限界である。★の式は三元一次方程式という式で一般的には条件から1つのパラメータに帰着させてバーッと答えを出せるっぽいのだが今回は全く適当なやり方が分からなかったので泥臭いやり方になった。

ともかく、自分としては趣味としての数学好きぐらいのレベルで理系の大学には行ってはいないし、数論もかじったぐらいだが一応答えらしきものを出せたのはうれしい。

説明も合同式などは使わなかったので高校生でもわかるのではないかと思う。

 

ちなみに数論はロマンがあるが現実の応用には繋がりにくいのでちょっとつらいところ

※↓読みかけで、途中で遭難している本(サムネ用)。数論の面白い本だよ!

 

ガロア理論の頂を踏む

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*1:x=0だと2桁の数字になるためx≧1

*2:英語だとtrivialとか言われるけどちょっとかわいそう?

*3:厳密にやりたい人は(たい)とかがぐぐって

*4:厳密には互いに素=同じ約数を持たないから

*5:おシャンティな解法にはこのような言い方をする