ひどいご都合主義・ルッキズムを見た

(『かぐや姫の物語』についてのレビューです。)

 

妻子捨丸の件である。かぐや姫石作皇子の不倫じみた求愛に慟哭していたのに、終盤、妻子持ちの捨丸とは逃避行に走ろうとする。かぐや姫自身は捨丸の立場には気付いてないという形だが、ムシが良すぎる。夢の中という設定かもしれないが、捨丸自身としてはかぐや姫となら一緒に逃げれるとか抜かしており、妻子に対する一切の葛藤や躊躇が見受けられない。

 

わざわざ妻子を描いておいてそれを切り離した描写をすることは理解しかねる。切り離すなら描く意味がない。

 

もし形を整えるとするならいくつか案が思いつくが・・・

  1. 妻子を消して、単に悲恋として描く
  2. 捨丸に身を引かせる
  3. 略奪愛を描く(結果はともかく)

物語のテーマを鑑みれば3で行くべきだったろう。

妻子があるとわかったうえでかぐや姫は捨て丸と逃避行を望むが結局、それは自分が最も嫌悪したはずの石作皇子と同じ醜悪さだということに気づき、自ら身を引いて月に帰る―――。

という流れなら月に帰るオチとの整合性もつくし、自分としても納得がいく。

 

地球はきれいだの汚いだの話はしてるが、結局、自分の心の醜悪さとかには触れないような構造になっており、肝心なところに踏み込んでいないわけである。結局、美人はつらいよ程度のレベルになりさがっており残念至極だ。

 

(ここまでがご都合主義の話)

 

で腹が立ったのは捨て丸の妻の描写である。目が点ってなんじゃ。要はブスってことなんだろうけど、もし前段のようなご都合主義を実現するためになるべく同情させないような手段としてブスに描いているとしたらとんでもない話である。

 

形式上は捨丸がひどい男だということにしてしまえば済むのかもしれないが、その都合よさを咎めないのであれば結局、物語としては妻のモノ化に加担しているようなものであって、むしろ女性は怒ったほうがいい案件であろう(単に見過ごされてるのかもしれないし、怒ってる人もいるだろうが)。

 

高畑作品は蛍の墓おもひでぽろぽろとかは半端ないと思っているのだが本作については・・・動きはすごいが、シナリオがうーんという印象であった。50億の予算があればもうちょっと違うことができたのではないかという気がしてならない(ちなみに千と千尋の製作費が15億)。

 

一将は得難しというだけに後継を育てるのは難しかったのだろうがジブリという体制が危機的という状況については残念でならない。ともかく高畑監督のご冥福をお祈りいたします。

 

 

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